伝説の名馬・ディープインパクトが亡くなる というニュースがあり、
17歳というまだ馬としてそこまでの高齢ではなかったことから、「毎年のように200頭以上も種付けを行っていたことが原因なのではないか」という声が大きくなっているようでした。
そこで本当に「種付け数が多い種牡馬の寿命は短いのか」という検証を行う為に、
既に亡くなられた、種牡馬リーディングの上位に入っていたような馬達の種付け数と寿命を、とりあえず思いつく限り、列挙してみたいと思いました。
(分かりやすいように150~199頭の種付け数には赤、200頭以上は赤+太字で表示してみました)
種牡馬リーディング上位馬達の、没年齢と、毎年の種付け数
・ノーザンテースト(33歳没)(1971年生まれ)
1976~1999年(58 71 83 64 61 75 98 89 94 79 60 60 62 66 61 56 60 67 72 65 31 13)
・オペラハウス(30歳没)(1988年生まれ)
1994~2012年(50 78 78 83 50 99 93 96 96 86 27 28 157 66 46 26 54 25 16)
・アフリート(30歳没)(1984年生まれ)
1990~2010年(0 0 0 0 0 114 132 129 77 119 103 90 100 97 67 81 81 69 66 59 1)
・ブライアンズタイム(28歳没)(1985年生まれ)
1990~2013年(62 62 62 61 79 70 92 110 115 131 120 138 153 102 84 81 80 81 81 86 87 77 36 9)
・ホワイトマズル(27歳没)(1990年生まれ)
1995~2015年(101 88 74 89 92 74 89 166 122 61 176 128 158 152 142 102 109 130 80 62 12)
・リアルシャダイ(25歳没)(1979年生まれ)
1984~2000年(73 81 86 67 97 90 94 97 81 111 120 105 104 72 89 97 36)
・キングヘイロー(24歳没)(1995年生まれ)
2001~2018年(136 118 130 101 127 174 163 126 109 93 91 101 108 97 110 84 46 21)
・スペシャルウィーク(23歳没)(1999年生まれ)
2000~2016年(147 167 211 206 105 234 216 126 95 142 144 112 82 79 76 43 19)
・フジキセキ(23歳没)(1992年生まれ)
1995~2010年(118 171 161 114 93 206 225 213 171 191 185 252 160 223 203 203)
・サクラバクシンオー(22歳没)(1989年生まれ)
1995~2011年(106 119 117 109 105 139 145 205 179 162 148 190 156 130 116 116 92)
・ステイゴールド(21歳没)(1994年生まれ)
2002~2015年(177 115 87 146 93 129 73 128 175 249 202 171 122 1)
・キングカメハメハ(18歳没)(2001年生まれ)
2005~2018年(244 256 216 202 145 266 266 251 81 143 108 151 132 122)
・ゴールドアリュール(18歳没)(1999年生まれ)
2004~2017年(147 189 136 132 204 186 207 144 180 160 188 191 141 6)
・ディープインパクト(17歳没)(2002年生まれ)
2007~2018年 (215 232 171 219 229 246 262 255 261 243 241 197)
・マンハッタンカフェ(17歳没)(1998年生まれ)
2003~2015年(211 206 221 201 164 154 196 207 202 200 164 113 126)
・ジェイドロバリー(17歳没)(1987年生まれ)
1991~2004年(89 100 106 141 142 166 150 165 168 150 137 0 0 110)
・トニービン(17歳没)(1983年生まれ)
1989~2000年(57 65 67 62 111 117 138 159 155 129 124 9)
・サンデーサイレンス(16歳没)(1986年生まれ)
1991~2002年(77 84 99 118 142 183 171 185 199 197 223 159)
・アグネスタキオン(11歳没)(1998年生まれ)
2002~2009(199 197 200 188 139 202 230 198)
まとめ
たしかにこの数字を見てみると、
2000年以前くらいに活躍していた種牡馬の年間種付け数は、現在よりも明らかに少なく、
長生きしている種牡馬は、ノーザンテーストを筆頭に、昔の種牡馬ばかりである ということ
そして年間種付け数が倍近くに上がったのが、2000年代の前半のあたりで、この種付け数で種牡馬生活を続けた名種牡馬達というのは、
残念ながら短命に終わってしまっていることが多い ということが言えるのかなと思います。
人間でも決まった期間内に、ディープインパクトのように250回以上の種付けしろ と言われたら、相当キツイんだろうなというのが想像できます。
人と馬では体への負担が違ってくるのではないか?という疑問も出てくるかと思いますが、
私は「白の時間」というオグリキャップの本を読んだことがあり、その中に「種付けはこたえていたと思う、そばで見ていて疲れるだろうなという心配になるような動きをしていた」という一文があったことを覚えています。
そのオグリキャップは年間でどれくらい種付けをしていたかと言いますと
1991~2006年(65 60 61 61 61 57 38 9 13 7 4 6 1 6 1 2)
となっており、リーディング上位の馬達と比べれば確実に少ない種付け数の部類に入ると思いますが、
このことからも、やはり「人間が求める膨大な数の種付けをこなすことによる心身への負担」というのは、多かれ少なかれ間違いなくあったことと思います。
例えば野球界でも、「投手の肘は消耗品」というのは周知の事実となっており、先発投手の交代の目安は「球数100球前後」という基準があったりするのと同様に、
種牡馬の年間種付け数も「この頭数以上は生物学的に超えない方が良い」という、大体のラインというのは、存在するものと思います。
各馬達の種付け数を見るに、150頭以上コンスタントに種付けしている種牡馬はあまり長生きしていない印象があり、
昔は年間100頭前後、多い年でも150頭ペースが当たり前だったのが、ある時期を境に何故200頭あるいは250頭以上の種付けを行うようになったのか? ビジネスの為以外に理由が見当たりませんが、種付け数が多すぎる種牡馬ほど短命に終わる傾向が今後も変わらないのであれば、種牡馬の為にも年間種付け数の制限などが導入されることを願いたいです。