「甲子園では先発投手は連投は当たり前なのに、何でプロ野球は中6日なんだろう」
「条件戦の馬はよく中1週~中2週とかでもレースを使うのに、OPクラス以上になるとそんな間隔ではほとんど使わなく、もっと間隔を開けるのはなんでだろう」
よく考えてみると明確な答えも分からないまま、あるいはそんな疑問すらも抱かないまま「それが当たり前のもの」として見過ごしている事実というのも、多々あると思います。
甲子園とプロ野球の、先発投手の登板間隔の違い
私が競馬を勉強させてもらっている「Mの法則」の今井雅宏氏の解説で、こんな内容の解説を見た時、私は「なるほど!」とスッキリ納得したのを覚えています。
「レベルが高くなると同時に、肉体の疲労度も比例して高くなる。甲子園では連投するのなんか当たり前だけど、プロになると中6日開けるでしょう?」
私も野球をやっていた経験があり、前にもどこかの記事で
私が草野球でピッチャーをやっていて、いくら投げても疲れず「何でプロの先発投手って100球くらいでバテちゃうんだろう」等と思ったという エピソードを書いたのですが、
例えば松坂大輔投手とか、その後プロでも活躍するレベルの選手にとって、甲子園の試合というのは自身にとってレベルが低い相手なので、全力投球じゃなくても抑えることができます。
しかしレベルが自分の能力の限界付近、つまりプロ野球の試合となれば、全力で投げないと抑えられない(あるいは全力で投げても打たれる)上に、年間通して投げ続けなければいけないので、
プロレベルの野球は「先発投手は球数100前後が目安」「中6日で登板」というのが決められており、これが日本の中で最もレベルの高い選手達が集まる、野球という競技の上での、「故障リスク」の基準であるのでした。
様々な競技においても、適正な間隔というものが存在する
素人考えでは「1日寝たら次の日も投げれるんじゃないの?」と思ってしまいがちですが、
「プロのレベルで」「1年間通して投げ続ける」「あるいは来年,5年,10年後も変わらず投げられるように」となると、人間の肩や肘というのはそんなに頑丈ではない為、そういった様々な要因を突き詰めていった結果、プロ野球の先発投手は「中6日」という間隔に落ち着いた歴史があるものと思われます。
これと同じように、例えばボクシングなんかだと、世界チャンピオンクラスになれば、年に2回くらいしか試合を組まず、つまり「中6ヶ月」くらい間隔を開けるのが普通とされており、
試合内容によってや、次の対戦相手とのスケジュール等の兼ね合いもあることでしょうが、一番は「ダメージを抜く」というのが理由であると思います。
これも傍目からは中々わからないというところはありますが、競技によっては、これくらい身体へのダメージというのは残るようなのです。
もちろんボクシングも、チャンピオンの戦績とかを見たりしていると、デビューしたての頃は年に4戦くらいしていたり等、
「心身への負担」との兼ね合いによって、「間隔」というのが決まってくることは、よく考えたら当たり前のことなのですが、どの競技でも同じようでした。
競馬におけるレース間隔について
私も競馬を長らくやっていて、何の疑問にも思っていなかったことだったのですが、これは競馬にも同じ法則が当て嵌まり、
未勝利戦や条件戦クラスでは、中1週とか中2週という間隔はよくあるケースなのですが、OPクラスになるとこんなに短い間隔で出てくるケースというのは激減します。
つまり馬にとって、これより上は無いというクラスであり、必然的に相手の馬達も強く、多くの馬のとっては心身疲労の残りやすいクラスとなります。
クラスが上がれば上がるほど、馬も「疲れたから無理」となり、レース間隔が伸びることはあっても短くなることは無いのは、想像がつくというものがあります。
こちらも「1日寝たら次の日走れるだろ?」と思ってしまいがちですが、
55キロの重りを背負って、何メートル走るかも分からず全力で走らされ、キックバックが飛んできて、レース中には馬とぶつかることもあって、ムチで打たれ と
ボクシングほどではないにしろ、私たちが傍目からは分からない、レースを走ることによる馬の心身への負担・ダメージというのも確実にあることでしょう。
故障のメカニズム
ようするにどんな競技であれ、長く活躍する為の、故障のリスクが少ないという判断基準に基づいて、
トレーニングなり、試合というものを繰り返しているということになります。
つまり肉体的にそれ以上の負荷が掛かれば、故障のリスクも上がり、「よくよく考えてみると、ちょっと運動したくらいじゃ故障なんてしないよね~」ということで、
サイレンススズカが故障した天皇賞・秋も、前走がエルコンドルパサー相手にぶっちぎって勝った伝説の毎日王冠だった訳ですが、
その反動が脚元に残っていて、ハイペースで逃げている時に体が耐えられなくなってしまったのか、それとも偶然故障したのか、
故障例を1つだけ取り上げた時に、その原因は何だったのかと決めつけることは出来ませんが、少なくとも「前走は関係なかった」と否定することは絶対に出来ないでしょう。
ダルビッシュ投手や田中将大投手等、大投手ほど故障に見舞われない理由
ダルビッシュ投手や田中将大投手が、国内プロ野球で大きな故障をしなかったのは、もちろん勤続疲労がメジャー時より少なかったこともあるでしょうが、
国内では頭一つ抜けている存在だったから。 つまり自身にとっては少しレベルの低いステージだったからこそ、身体への負担が少なかったことは、間違いなくあったことでしょう。
ダルビッシュ投手は入団して間もない頃に、「メジャーには絶対に行かない」と言っていたものの、国内で敵無しの強さとなってしまい、このままでは自分の成長にも繋がらなく、勝負がしたいという想いが強くなったというエピソードや、
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2012/01/25/kiji/K20120125002500450.html
田中将大投手の「得点圏での被打率の低さ」や、「ピンチになるとギアを1つ上げる」と言っているのも有名な話です。
https://spaia.jp/column/baseball/npb/4784
もし故障が偶然引き起こされるものだとしたら、順風満帆だった時期に故障するような大投手というのも、一定数いないとおかしいこととなってしまいます。
まとめ
もちろん人でも馬でも「個々による体の強さ」に差はあると思いますが、
それ以前に、自分のレベルの限界付近の運動を行って、身体に負荷が掛からないと、そうそう故障なんていう現象は起きない という事実も見過ごしてはいけないと思いました。
骨や神経に異常のない健康男児が、ちょっと軽い運動をしたくらいでポキポキ骨が折れますか?というお話で、
誰が考えても生物学的におかしいと思うレベルですし、いくら虚弱体質といっても「限度はある」ということですね。
「心身への負担が少ないから故障が少ない」
競争馬が故障を発生するケースというのは、もちろん馬個体の体の強さも関係しているでしょうが、最たるところは「全力を出して走った」というところで、
1レースの反動を吸収しきれなかった場合や、自身にとって限界レベルのレースで何度も激戦を重ねた場合や、負けたレースの場合でも相当身体に負担を掛けてしまった場合、あるいは蓄積された疲労によって等、
故障発生のタイミングは様々あると思いますが、そこに至るまでの過程のどこかに、原因も必ずあるはずです。
故障が多い馬というのは、単に馬個体の体質の弱さが原因というだけでなく、
一戦一戦全力で走ってしまうタイプだったり、能力の絶対値が高くない場合も多く、「この馬は連戦が効かない」というタイプももちろんこういった理由が関係していることでしょう。
なので、GⅠレベルのレースを「タフに何度も使えて好走している」という事実だけでも、その馬の能力の高さを伺うことができ、
馬の強さを測る上で、1つの有効な指標となってくれることと思います!